歌を歌う姿勢がある。ピアノを弾く姿勢がある。私が藤岡の指導を見て感じたことである。
つまり姿勢を正すと、正しく歌え、ピアノの音も良くなる。
北海道の斜里町で、発声の講師として出掛けた時、ピアノ指導の場で、藤岡が姿勢を正すと、ピアノの音が変わった。それを見て、皆、大きく納得していた。
歌を歌うのに、歌う体になることが重要であることを藤岡は指導していた。しかし、そんな体操が嫌で、止めた者もいる。つまり、声だけ、兎に角、声だけ出せばいいというアホである。
ピアノ弾きも、その姿勢を見れば、どんな音を出すのか解る。
フジコなんとかというピアノ弾きのおばさんがいる。その姿勢は、大根を刻んでいるように弾く。だから、その音も大根を刻んでいるような音になる。それを人は知らない。演奏については好き好きなので言わない。ただあるがままを言う。
私も歌う時、門前の小僧習わぬ教を読むという通り、藤岡の練習を毎日聞いていたので、そのように歌う。高い音の時には、上半身が脱力してゆるゆるになる。力を入れない。
猫や犬は、いつも脱力しているゆえに、ここぞと言う時、瞬時に動く。動物の基本である。
合唱の練習で、アホのように、アーアーを繰り返して声を出すが、一向に良くならない。馬鹿の一つ覚えで、アーアーとやっている。趣味であるから、何も言わない。ただアホだと思うのみ。
一時間練習するとすれば、50分は体操である。残りの10で歌えば、それで良し。
私は、歌の練習などしない。銭湯に行き、歌詞を覚えるために歌うのみ。後は、音取りで二三度歌う。練習すれば、いいというものではない。死ぬ程練習しても、成らないものは成らない。
もし言うならば、24時間歌を歌っているとでも言う。つまり、顔を洗う、ご飯を食べる、すべての所作が歌なのである。それを知らない人は、歌など歌えない。ピアノも然り。ピアノの前に座っていることが、練習ではない。ピアノを弾く姿勢を24時間保っていることが、真実である。これを理解する者は、幸いである。